研究内容

潤滑状態の可視化

「百聞は一見にしかず.」は文字通り, 100回説明を聞くことは 1回観ることに及ばないという故事成語です.英語の諺にも ”Seeing is believing. “ とあり,観ることほど確かなことはないという意味になります.「観る」という行為は様々な情報が視覚的に得られるだけでなく,非常に大きな説得力を伴います.よって,種々の現象を可視化することは現象解明に非常に有効な手段であり,これまで多くの研究分野で活用されてきました.例えばトライボロジーの分野においても,光干渉法を用いた油膜厚さ測定は典型的な可視化技術の一つであり,油膜挙動のみならず接触状態の評価にも適用されています. 

トライボロジーは,小規模な機器から大規模な産業機械まで,機械システムや部品の性能,耐久性,効率などを理解し,最適化するのに重要な役割を果たしています.つまり,トライボロジーは,様々な条件下での材料間の複雑な相互作用を調査し,摩擦と摩耗を最小限に抑えることを目指しています.しかし、トライボロジーは薄膜厚(nmオーダー)や高圧力(GPaオーダー)などの厳しい接触条件を扱うため,特に可視化技術の高度化*が必要であると考えています.また,実際の複雑な現象の可視化は,私たちが導出しようとしている理論式の精度を検証するだけでなく,新たな発見や新しい理論構築のヒントを得るチャンスにもなると考えています.




* NSKは,2018年に横浜国立大学の中野健教授のご指導の下,潤滑状態を可視化する「電気インピーダンス法」を開発しました.